銀行業界初の取組で生産性を上げ、お客様への付加価値を上げる ~新生銀行様~

銀行業界初の取組で生産性を上げ、お客様への付加価値を上げる ~新生銀行様~

■プロジェクト実施経緯

株式会社新生銀行様は東証1部の金融機関です。
銀行業界初となるATM引出手数料の無料化など、お客様への価値あるサービスの創出を追及し続けており、中期経営計画では、「グループ融合により革新的金融サービスを提供する金融イノベーターであること」などをビジョンに掲げています。
それらのビジョン達成に向け、グループ各社の間接機能を集約した「グループ本社」というバーチャル(仮想)組織を銀行業界初の取組みとして設置しました。新生銀行様では、グループ企業と共同で業績数値を把握するプロセスを通し、業績予測の精度をあげ、事業の選択と集中の推進に資するための手段として“Adaptive Planning”(予実管理クラウドサービス)を採用し、2017年6月よりAdaptive Planning(以下、Adaptive)導入プロジェクトを開始しました。

■今後の生産性改善、業務高度化を“自分たちで推進できる基盤”を作る

株式会社新生銀行 グループ経営企画部 セクションヘッド 兼 経営企画部 上席業務推進役 吉田 智紀氏

株式会社新生銀行
グループ経営企画部 セクションヘッド 兼 経営企画部 上席業務推進役 吉田 智紀氏
(インタビュアー・編集:株式会社ディーバ 連結会計事業部 プロジェクトマネージャー 小野 雄一郎)

■(小野)人口減少による国内市場の縮小や低金利施策の影響による業界再編など、金融業界を取り巻く環境が大きく変化しているのに対し、御社の強みやそれを構成するための取組みをお聞かせください。

(吉田)新生銀行グループの強みとしては、銀行業としての通常の金融サービスに加え無担保ローン・カード・信販・リースなどノンバンク業務を行うグループ会社があり、幅広い事業をグループで有している点が大きな特徴として挙げられます。新生銀行グループでは第三次中期経営計画を全体戦略とし『事業の選択と集中』『グループ融合』を進めることで、組織をより筋肉質にし、新たな価値を創出するため数々の取組みを進めております。

■(小野)『事業の選択と集中』とは成長分野にリソースを最適化する、ということだと思いますが『グループ融合』というのはどういったことを指しますか?

(吉田)新生銀行グループは、お客さまの真のニーズに基づき、既存の枠を超えた新しいビジネスを創出することで、革新的な金融サービスを提供する金融イノベーターとなることを目指していますが、『グループ融合』はそれを実現するために不可欠な取り組みです。『グループ融合』には、次の2つの側面があります。

  • 1.ビジネスにおいては、現状はグループ会社それぞれが個社単位で経営資源を配分し、商品やサービスを提供していますが、グループの顧客基盤とリソースを活用し、シナジーを創出することで、お客さまの真のニーズに基づく、既存の枠を超えた新しいビジネスの創出を目指します。
  • 2.経営管理機能においては、環境に応じた柔軟なビジネス運営とリーン(筋肉質)なオペレーションのグループワイドでの実現を目指します。グループ各社が持っている間接機能の統合・一体運営を目指したグループ本社の設置はその一環で、各社で重複する間接機能の効率化・高度化の実現を目指します。
グループ融合

出典:新生銀行

■(小野)グループ融合の話と関連するかと思われますが、今年の春に新設された吉田様の所属する『グループ本社』の特徴とミッションについて教えてください。

(吉田)グループ本社とは、グループ各社の間接機能、具体的には人事、財務 、総務、IR・広報、監査、リスク管理、法務・コンプライアンス、業務企画の一部などを、持株会社という法人格の新設ではなく、新生銀行の中に仮想のグループ本社という形で設置することにより、効率的な経営資源の活用と効果実現のスピードの最大化を図ろうとするものです。
またグループ本社のミッションとしては、次の3点があげられます。

  • 1.ビジネス部署への高付加価値サービスを提供
  • 2.間接機能、ビジネス部署双方の生産性の改善
  • 3.成長に資する戦略領域の強化

主に間接機能がターゲットとなっていますが、間接機能を融合することで結果としてビジネス部署側の負担が減るだろうと考えています。たとえば、経営企画部やIR担当はステークホルダーへの説明素材として、財務部署経由でビジネス部署から様々な報告を受けています。一方、ビジネス部署内部では日頃のビジネス推進にあたり関係者に合意を得るため、同じような情報を経営企画部とは異なる頻度・フォーマットで報告する業務が発生しています。これは一例ですが、このような多重業務を削減することで現場が本業に集中できるように、グループ本社は効率化に取り組んでいます。
中長期的には各社の間接機能をグループ本社に集約し、効率化されることで捻出できた人材を、戦略領域・成長分野に割り当て、さらなる全社的な生産性向上を目指してく予定です。

グループ本社

出典:新生銀行

■(小野)一般的には“ホールディングス化”によりブランド整理や事業リスク分散をしつつ間接機能を集約し、ホールディングスが全体戦略を考え、各社は各事業に専念するという形態が一般的かと思われますが、グループ本社というバーチャル組織にした狙いはどのような点にあるのでしょうか?

(吉田)持株会社体制への移行についても、さまざまな角度から検討していますが、現時点では決定事項ではありません。持株会社という新しい法人を設立するためには、そのための人財や経営資源などの負担があります。メリットがそれを上回るのであれば実施するのが合理的ですが、経営としてそこまでの判断には至らなかったということかと思います。会社としては、持株会社という法人格の有無にかかわらず、グループ本社の設置による間接機能の統合・一体運営を、先ず喫緊の課題として実施するという選択をしました。

■導入プロジェクトについて

■(小野)次はより業務に寄った内容を伺いたいと思いますが、今回の予実管理クラウドサービスの導入プロジェクト実施に至った経緯、またなぜこの領域のシステム化を実施したのか、教えてください。

(吉田)中期経営計画の中の『事業の選択と集中』という話を冒頭にしましたが、実際に資源を最適化するためには、信頼性のある確度で現状の把握や将来の予測を立てる必要があります。そうしたときに、業務やプロセスの改善を急ピッチで推進している中、数値集計に多くの時間を割くような今までの業務の状態で、今後本当に確度の高い将来予測が立つのかという課題が出ていました。
かなり前の話になりますが、管理会計ツールとして、自社の設備で運用するオンプレミス製品の紹介を受けたことがあります。ですが、管理会計は要件が変わり易く、高い初期投資したところで導入に成功するかわからず判断が難しいという思いと、かつ当時は製品の選択肢も少なかったので導入しませんでした。しかしこの2~3年でクラウドサービスなどオンプレミスに比べて、初期コストを低く抑える選択肢が充実してきたこともあり、今回のプロジェクト実施に至りました。

■(小野)選択肢が充実してきたことと、御社の生産性向上を推進するタイミングがマッチしたということでしょうか。

(吉田)そうなりますね。

■(小野)今回、国内・海外の他2社の製品と比較して、Adaptiveを採用いただいた決め手、良かったポイントはどこでしょうか?

(吉田)Adaptiveを使うことで、個別のビジネスごとに設定した予算ドライバーの結果を最終的な予算策定フォームに連動するよう、“自分達で”段階的に構築していける点が一番の決め手です。またその運用をしていく基盤となる使い易さや製品成熟度が他製品と比べ良かったことも要因です。もちろん他の国内金融機関に導入実績があり、弊社のセキュリティ基準を満たしていることが大前提となりますが。

■(小野)製品選定プロセスの中で、ビジネス部署の現場の関係者の方々へプレゼンするフェーズがあり、その際の参加者アンケートの評価結果も満場一致でAdaptiveだったと伺いましたが。

(吉田)そうですね。他社の製品でも似たようなことができるのかもしれませんが、たとえば他の2社のキューブ(=多次元)構造の製品だと事前に要件が固まっていないといけない等の制約がありました。段階的な拡張設定ができないと今後のビジネス再編などが発生した場合、初期に設定した内容に運用が制限されてしまったり、既設内容に対する改修の影響が大きくなるなど、現場運営への負の影響やシステムコスト肥大化等のリスクが大きくなる可能性があります。
その点、Adaptiveは入力フォームやロジックをユーザが自由に編集できる柔軟な製品でしたので前述のようなリスクが低いと評価しました。

■(小野)中長期的な活用を想定して選定頂いた、ということですね。

ここでサービス提供者側として少しだけPRさせていただこうと思います。Adaptiveは2016年の米国第三者評価機関であるGartnerにて、この分野における『市場に影響力のある“リーダー製品”』(評価対象全16製品中上位4製品)に選ばれた中で唯一、“(CFOの)業務経験のある開発者(兼創業者)が作った製品”です。
以前Adaptive提供元であるAdaptive Insights社の役員(マネジメントメンバー)と対談した際、製品品質をどのように担保・向上しているのか?と質問した際の回答が面白かったのですが、取組みとしては主に2つ実施しており、

一つ目は①外部との連携による製品開発の推進(≒オープンイノベーション)
二つ目は②様々な人材を製品企画チームと連携すること(≒ダイバーシティ)による製品の使い易さの確保
だと。どいうことかというと、

まず①に関していうと企業内部の優れた人材に限らず企業外部の優秀な人材、たとえばコンサルティング会社や会計ファーム、Adaptive社周辺のシリコンバレーのIT企業等と共同で製品開発を進めることで企業内部での(リソース・知識などの)開発コストが低減されるだけでなく、内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造するよう努めることで製品機能向上のスピードアップを図り、現在では年3回のメジャー製品アップデートを行えるなど、製品の品質を向上し続けているということ。

②に関していうと、大手ERP企業や他のクラウドサービス会社、ファイナンス業務やデザイナー出身者など様々な背景・経験を持つメンバーが製品企画チームに携わることで、これまでAdaptive社外に求められていた異質な見方を社内に取り込み、内部に刺激をもたらし組織活性化を図りつつ、製品の長期的な改善への意識を醸成することで、製品へのイノベーション促進を行っていること。また多様なメンバー構成により、製品機能向上の際、一部の人の意見だけを反映しないよう“汎用性”を保っていること。

①・②により、いわゆる“プロダクトアウト”とならないよう配慮しつつ製品の使い易さを保ち、かつ品質を継続的に高めることで製品の競争力、すなわち競争優位性を構築し、結果として従業員400人規模のAdaptiveが数十万人規模を誇る大手IT企業の製品が数ある中、Gartnerから“リーダー製品”と評価されている、ということです。
私が面白かったのはマネジメントを行う役員がそれらの狙いのために意図的に組織や仕組みをデザインしていることです。

Adaptive Planningの製品品質担保・向上

Adaptive Planningの製品品質担保・向上方法

(吉田)なるほど、そのようにして製品のクオリティを担保しているのですね。業界は異なりますが、中々興味深いです。

■(小野)ところで、御社の製品選定・検証としてユニークだったのは、1ヶ月程度トライアル環境(プロトタイプ)を実際に動かしてみる、という時間・労力をかけた点だと思います。御社がそのようなプロセスを行おうと思ったのはなぜでしょうか?

(吉田)やはり日々の自社の業績管理を行う管理会計のツールですので、自分達でノウハウを溜めていきながら今後も設定改修を重ね、活用方法を検討していく、というプロセスがとても重要なポイントだと思っています。初期導入時に構築したもので終わり、というのではなく導入後に自分たちでシステム機能を使い込んで活用していく、という観点で製品比較をしたかったため、そのような検証方法をお願いしました。
製品選定の過程で機能要件一覧(=RFI)を各社から集めてはみたものの、その書面上では『○』になっているが自分たちで使ってみると想像とは違う、ということが他製品にはありましたので。

■(小野)『ITリテラシーが高く、機能を知っている人であればできないこともない』、というようなものも『○』(=できる)という評価になっていたり、機能としてはあるが運用上果たして適切か?・・ということでしょうか?

(吉田)そうですね。果たして現場有効活用できそうか、という観点で『○』ではないとなると、実際の運用展開時に大きな影響がありますので。

■(小野)今回のAdaptive導入プロジェクトのもう1点ユニークなポイントとして、『構築作業の100%をグループ本社で行う』としていますが、その狙いは何だったのでしょうか?

(吉田)作ってみないと分からない部分をなるべく早めに自分たちの中で理解したい、という思いがありました。一般的にITベンダーの方々に構築依頼した場合、完成してみたら思っていたのと違うという可能性もありますが、自分たちで初期から構築することでシステムの機能上実現が難しい点などを早い段階で気づける部分も多く、運用で回避するかなど、早期に検討できます。Adaptiveはそれが可能な製品なのでその進め方が絶対に良いな、と最初から考えていました。
あと他社にはない特殊な要因かもしれませんが、今回の導入プロジェクトメンバーに情報システム部署出身者が多かったというのもありますね。管理会計ツールのような仕組みを過去に作った経験があり、自社で一から構築することに対してあまり抵抗はなかったですね。

■(小野)なるほど。それで今回のプロジェクト形式のように、御社が構築主体で我々がアドバイザリーという枠組みで進めることが実現できたのですね。
ちなみに、現在週次で行っているプロジェクト定例会に主要グループ会社の担当者様が最初から参加されていますが、その目的は何でしょうか?

(吉田)現在定例会に参加している主要グループ会社の担当者は、全員がグループ本社の経営企画部のメンバーです。導入当初からグループ全体で同じソリューションを導入しようとは思っていて、各社ごとに内部の業務は異なっていても一旦グループ共通の設定をしたAdaptiveにのせることでグループ全体の状況をメンバーが早期に把握することができます。そこでFit&Gapを洗い出し、Gap改善を検討することで全体の運用最適化を早期に実現しようという狙いがあります。

※プロジェクト定例会風景:グループ各社からグループ本社に参加する社員の方々との打合せ

※プロジェクト定例会風景:グループ各社からグループ本社に参加する社員の方々との打合せ

■(小野)最後に、今後のAdaptive活用における展望はどのようなことでしょうか?

(吉田)スタートはまず年度予算を入れて集計するという限定的な形で使う形にはなりますが、ゆくゆくは前述のようにビジネスごとの数値の根拠やトレンドの分析を行うことで、予算・実績差異要因の早期特定や複数シナリオでの予算策定による業績予測の精度向上、資源最適化の検討機会の頻度向上、投資予算の適正化や業務の生産性向上を実現していけたらと思います。
グループ本社のミッションでもある生産性向上を実現することで、現場部門へのビジネス活性化に貢献し、ひいてはお客様へ提供する付加価値の最大化を目指していきたいと思います。

株式会社新生銀行 グループ経営企画部 セクションヘッド 兼 経営企画部 上席業務推進役 吉田 智紀氏